フランス、売れ残り品の廃棄禁止へ

フランスで、在庫や売れ残り品の廃棄を禁止する法案の準備が進められている。環境保護や循環経済の実現を目指したものだが、施行された場合はラグジュアリーブランドにも影響があると見られている。

ブリュヌ・ポワルソン(Brune Poirson)仏環境連帯移行副大臣によれば、きっかけはテレビ番組による“潜入リポート”だった。新品のおむつや未開封の玩具などをアマゾン(AMAZON)が廃棄物として扱う様子が放送され、物議を醸したのだという。同氏は、「ショックと大きな怒りを感じているが、私は変化を起こせる立場にある。何カ月か後には、使用可能な製品の廃棄を禁じる法律ができるだろう。違反者には、罰金や懲役刑を科することも考えている」と語った。アマゾンはこれに対し、廃棄される未使用品はわずかであり、ほとんどはリサイクルや再販売、返品、もしくは寄付しているとの声明を発表した。

仏政府は以前から循環経済への移行を掲げており、2018年にはエドゥアール・フィリップ(Edouard Philippe)仏首相が、再利用可能な製品に対して21年までにロゴをつけるなどのロードマップを発表している。ポワルソン仏環境連帯移行副大臣が主導する今回の法案準備は、そうした枠組みにも合致する。なお、これは今夏の議会提出が予定されているが、広く国民の意見を募るため、正式な期日は設定されていない。

フランスでは16年2月に食品廃棄禁止法が施行され、一定以上の規模のスーパーマーケットなどにおける賞味期限切れ食品の廃棄が禁じられた。あらかじめ契約した慈善団体に寄付するか、家畜の飼料や肥料に転用することが義務付けられ、違反した場合には罰金が科せられる。こうした動きによって仏社会では食品廃棄に関する意識が高まったが、それが衣料やその他の分野にも広がってきているのだという。

セールをしない多くのラグジュアリーブランドは、ブランド価値を毀損しないため、売れ残り商品を処分している。「バーバリー(BURBERRY)」は、売れ残り商品を毎シーズン焼却処分していたことを批判され、18年9月にこれを廃止した。「バーバリー」は現在、そうした商品の再利用やリサイクル、寄付などを行っているほか、19年3月には英慈善団体スマートワークス(SMART WORKS)と提携し、従来の寄付に加えて困窮している女性が仕事の面接に行けるようにスタイリングアドバイスも提供している。

仏ウィメンズウエア連盟(FRENCH FEDERATION OF WOMEN’S READY-TO-WEAR)のフランソワ・マリー・グロー(Francois-Marie Grau)は、「確かに新品や未使用の衣服を廃棄するのは無責任だが、一般的に小売りは廃棄ではなく値下げなどで売り切ることを好むと思う。リサイクルの普及率がまだ低いので、今後はそうした方法を検討するといいのではないか」としつつも、「偽物や一定の基準を満たさない商品など、廃棄処分せざるを得ない場合もある。新たな法案はこうした面も考慮すべきだろう」とコメントした。

19-20年東コレは何が面白かった? 取材班がゆるりと討論

3月18〜23日に開催された「アマゾン ファッション ウィーク東京(Amazon Fashion Week TOKYO以下、AFWT)」が、ついに終了。52ブランドが思い思いのショーやイベントで新作コレクションを披露しました。前評判通り素晴らしいショーを行ったブランドもあれば、期待を(いい意味でも悪い意味でも!?)裏切ったブランドも数多くありました。そこで今回、取材班が今期のAFWTについてゆるりと討論。長年AFWTを取材してきたベテラン記者2人と、先シーズンから取材班に加わった新米記者1人が、面白かったショーやブランドについてゆる〜く語り合います。まずは最初の3日間をプレイバック!

新米記者AFWTがついに終わりましたね。長いようで、短い一週間でした。

ベテラン記者諸事情で今回は2日しかいられなかったけど、今シーズンは、ここ最近の東コレを盛り上げていたアマゾンファッションによるプログラム「アット トウキョウ(AT TOKYO)」がAFWT期間中に開催されないということもあり、ブランド的にはややインパクトが弱い印象でした。

前回の「アット トウキョウ」での「N.ハリウッド(N.HOOLYWOOD)」は特に盛り上がっていましたね。会場は少し遠かったけど、たくさんの人が来ていました。

optimize.webp (9)そうそう。正直今回は、盛り上がるのかちょっと心配していました。ただ、トップバッターの「ドレスドアンドレスド(DRESSEDUNDRESSED)」の来場者はさすがの大入り。「ドレスド」のショーを見に来る若い人たちはオシャレな人が多いですね。テーラードをしっかり作れるからこそ、さまざまな遊びの要素を加えてもブレない芯の強さがあります。

演出がかなり印象的でしたね。白い服を着たモデルと、黒い服にフェイスマスクのモデルをペアで登場させて、“人間の2面性”を表現したとか。

最近は「ダブレット(DOUBLET)」なんかも担当しているスタイリストのデミ・デムさんと組んで、ちょっと際どい表現や演出も増えてきました。今回は取調室風のセットを組んで観客はほとんどスクリーンを眺めるという演出でしたが、服は見えましたか?

ちょっと演出が凄すぎて、服の記憶が……(笑)。

僕も(笑)。ただ、服一点一点のクオリティーは高いので、その辺が来場者にも伝わっていればいいなという印象です。

「ジェニーファックス(JENNY FAX)」は相変わらずの狂気さを見せましたね。先シーズンは切断された指がモチーフのアクセが髪についていたりしましたが、今季は指に熊ちゃんやケーキがぶっ刺さってました。

かなりのキワモノ感がありました。いつもよりは割と王道的なロリータかと思いきや、無造作に伸びたロングヘアやずり落ちたスカートから毛糸のパンツをのぞかせるなど、二度見三度見要素はばっちり。後半に登場したキューピーちゃんのようなルックが狂気のピークかな。

個人的には目玉がついた親指に見えました。あれはどういったシチュエーションで着るんでしょうか?

ごめん、まったく想像できない(笑)。スタイリングは前シーズンに続いて「バレンシアガ(BALENCIAGA)」などのスタイリングを手掛けているロッタ・ヴォルコヴァ。前回よりはスタイリング負けしていない印象でした。

クロコダイルバッグの「ナンシー・ゴンザレス」が牛革製を発売 

クロコダイルバッグで知られる「ナンシー・ゴンザレス(NANCY GONZALEZ)」は今秋、牛革製バッグを発売する。価格はこれまでのエキゾチックレザーバッグより3割ほど抑えており、通常4000ドル(約44万円)台のところ、1850ドル(約20万3500円)から2950ドル(約32万4500円)だ。

素材の供給元は「エルメス(HERMES)」製品と同じなめし皮工場であり、牛革のメリットは扱いやすさで、これまでブランドにはなかったデザインも可能だという。ただし、すべてのバッグにクロコダイル革で装飾を施し、ブランドらしさをアピールする。

今秋発売する製品“クリスティー(CHRISTY)”は、ワークトートやトラベルバッグ、メッセンジャーバッグの要素を兼ね備えたデザインで、カジュアルでありながらエレガントなテイストがポイントだ。また、これまでハンドバッグ製品はコロンビアの自社工場で製造されていたが、今回の牛革製品はイタリアで製造されている。

秋コレクションは、牛革製品がすでに受注の30%を占めているといい、商品は米サックス・フィフス・アベニュー(SAKS FIFTH AVENUE)や英ハロッズ(HARRODS)などの店舗に並ぶ。

ワダエミが衣装を手掛ける映画「サムライマラソン」が公開 飽くなき創作の原動力とは?

土橋章宏の小説「幕末まらそん侍」を原作とする映画「サムライマラソン』(ギャガ配給)が22日、全国公開された。衣装は、1985年公開の映画「乱」(黒澤明監督)で日本人女性初のアカデミー賞最優秀衣装デザイン賞に輝いたワダエミが手掛けた。

optimize.webp (2)舞台は、江戸幕末の安中藩(現・群馬県安中市)。外国の脅威に備えて藩士を鍛えるために決行したとされる、十五里(約58km)を走る「安政遠足(あんせいとおあし)」の2日間を描いた。「1着になればどんな願いでもかなえる」という藩主の言葉に駆り立てられ、藩士たちが我先にと山中を走る中、遠足を謀反とみた幕府からの刺客が迫る。主演・佐藤健が幕府のスパイとして安中藩に潜入する唐沢甚内を、長谷川博己が安中藩主・板倉勝明を、小松菜奈がその娘の雪姫をそれぞれ演じ、そのほか、森山未來、染谷将太らが出演する。

「衣装作りは台本やキャスティングの変更があって、いつもギリギリになる。今回もそうだった」と振り返るワダ。それでも、「仕事を全力でやりきる」ことにこだわり続けているという彼女に、今回の映画の衣装プランのポイントや、衣装デザイナーの仕事を続ける秘訣を聞いた。

山を駆ける藩士たちの疾走感や迫力のバトルシーンは見どころの一つ。日本と西洋の対比や、「近代」の萌芽、侍の時代の終焉なども暗に示された、観ごたえのある作品に仕上がっている (c) ”

ワダの衣装プランの出発点は、「ストーリーだけでなく、作品の背景を理解すること」。新選組を「男色」という視点で捉え直した「御法度」(1999年公開、大島渚監督)や、西洋化に伴う難しさを描いたミュージカル「太平洋序曲」(宮本亜門演出)なども手掛けてきたワダは、江戸幕末前後の作品資料を多数所持している。今回の衣装制作もそうした資料の見直しから始めた。「『乱』のときは桃山・天正時代の能装束・狂言の要素を入れるため、とにかく着物を作り込むことで世界観を提案したの。だけど、『サムライマラソン』の安中藩はどの藩士も貧乏で質素。『“群像”としてのさまざまな役柄を引き立てる衣装』ということに気を配った」と話す。

optimize.webp (1)唐沢ら藩士の衣装を考える際、「分かりやすくゼッケンを付けようかと最初に思い浮かんだけど、漢数字で書くと海外上映で外国人が理解できないなんて笑い話もあったわ」と明かす。「袴の側面をつまみ上げることで動きやすくする「股立ち(ももだち)」という定番の形にしたの。今の人たちが着たら重いばっかりなんだけど、なりふりかまわず全力で走ってくれると、そりゃあカッコいいのよ」。
小松菜奈演じるヒロイン・雪姫の艶やかな着物姿も目を引く。遠足前夜の山肌に映える淡いブルーと和柄の着物は、雪姫の西洋文化への憧れや芯の強さを表現したものだという。「ティファニー・ブルーと和柄を組み合わせた衣装は、幕末の頃のシンプルな着物をモチーフに、全て一から作った。女性が強く生きる時代が間もなく訪れるという中で、雪姫も“お姫さま”に納まらず、絵で生きていくことを決意する。女が世の中に出てゆく時代が来ると彼女の感性が先取りしていたことを、衣装に込めた」。

インタビュー時のワダは黒のトップスとパンツだったが、「衣装のデザインをするときも、黒い服を着ることが多い。自分が黒子にならないといけないから」という。タイトなスケジュールの中で、雪姫の衣装は白生地から2カ月かけて作った。冒頭とラストで登場する米海軍ペリー提督(ダニー・ヒューストン)の衣装は、当時描かれたペリーの肖像画から日本の職人が手作りで再現した。ポリシーは「自分のやったことのない仕事を選ぶ」こと。「同じ仕事は繰り返したくないから、毎回『やりきる』ために全力で取り組む。受ける仕事はいつも『はじめまして』だから、いつも大変」と語る。

これまで息を切らすことなく仕事を続けられてきた原動力は何なのかと聞くと、「鉛筆が一品あれば出来てしまうし、やりたいからやっている。この映画やるなら、この衣装を作れるな、じゃあ生地をどうやって手に入れるか……と考えを巡らすことは今も飽きないし、純粋に楽しい」と答えた。「オペラであれ、映画であれ、私と仕事を一緒にやりたい、という人がいてくれることが一番のモチベーション。ありがたいことに、そういう人がたくさん待ってくれている。できる限り応えたいから、仕事と仕事の合間がなくなってしまうのが悩み」。

H&M財団が革新的技術に100万ユーロ 子どもと一緒に成長する服などが受賞

H&Mの創業家一族による非営利財団、H&Mファンデーションが主催する「グローバル・チェンジ・アワードの授賞式が4月3日、スウェーデンのストックホルム市庁舎で開かれた。ここはノーベル賞授賞式の晩餐会が行われる場所。同アワードは“ファッションのノーベル賞”を目指して2015年に始まったイノベーション・コンペで、今回が4回目となる。毎年5つのアイデアを選考し、受賞した5組に100万ユーロ(約1億2400万円)を分配し、H&Mファンデーション、アクセンチュア(ACCENTURE)、スウェーデン王立工科大学(Royal Institute of Technology)が提供する1年間のイノベーション促進プログラムの支援を行うものだ。受賞した5組を紹介する。

ドイツのサーキュラーファッションは、全ての服で循環型デザインを実現させる基盤となるソフトウエアを開発した。賞金の額は最も多い30万ユーロ(約3720万円)。

開発者のイナ・ブッデ(Ina Budde、30歳)代表は「100%循環することを考慮してデザインされた服はほとんどない。“穫る~作る~捨てる”の直線型のモデルから循環型に移行する必要があると感じていて、5年前から取り組んでいた」と話す。仕組みは、循環型を実現するための選択に向けて、リサイクルに必要なデザインやツール、資源といった情報をデザイナーと共有し、素材、裁断、製造など各工程での地球への環境負荷が明示される。それをもとにデザインされた製品の仕様はデジタルID化され、消費者はこの“循環ID”をスキャンすると製品サイトにアクセスでき、着古した後の最適な選択肢が提示される。このシステムを使えば、仕分け工場やリサイクル工場で適切に円滑に処理することができるというものだ。

optimize.webp (1)スイスのディンポラは、風雨を防ぐアウトドアウエア用の鉱物由来の生分解性メンブレン素材を開発した。賞金の額は25万ユーロ(約3100万円)。

「自然を愛する人々のためにデザインされた服が環境に負担を与えるのは皮肉なこと。厳しい気候条件に耐えるための加工に有害物質が用いられ、洗濯すると発がん性物質やマイクロプラスチックが放出されるから」とマリオ・スタッキ(Mario Stucki、29歳)最高経営責任者(CEO)は語る。ディンポラは生分解性でありながら、従来と同等の性能を発揮する代替素材を開発した。無害な鉱物由来でフッ素を含まず、超薄型メンブレン(膜)であることからどのような服にも用いることができる。「今は石灰を用いているが、他の鉱物でも実現可能な技術だ」という。

ケニアのグリーン・ネトル・テキスタイルは、イラクサを用いたテキスタイルを発表した。イラクサを栽培する仕組みづくりから提供して、ケニアの農家の生活水準を向上させる目的もある。賞金の額は15万ユーロ(約1860万円)。

「かんがいも機械の導入も難しい急斜面があったとしたら何を栽培するか?――そこで自然に育つものを育てればいい」と、ジョナ・ムワンギ創業者は話す。少しの日光と最小限の水と土があれば育つ強い植物のイラクサを育てて、その茎から麻のような風合いのテキスタイルを作る仕組みを考えた。処理段階で出る残余物は紙や染料を作るときに用いることができる。ケニア国内だけでも20万軒の自作農家に仕事の機会を与えることができるという。「イラクサはトゲがあるため悪評を受けてきたが、ついに正当な評価を得られるときがやってきた。布はチクチクしないよ」とムワンギ創業者は言う。

イギリスのプチ・プリ(Petit Pli)は、子どもの成長に応じて大きくなる服を提案した。宇宙工学と折り紙から着想したもので、現在特許出願中だという。賞金の額は15万ユーロ(約1860万円)。

「生まれてからの2年間で7サイズも大きくなり、ほとんど着ないで終わる子ども服の量にぞっとしている。丈夫で魅力的で子どもと成長する服があったらと考えた」と、開発に至った経緯をライアン・マリオ・ヤシン(Ryan Mario Yasin、25歳)創業者兼CEOは語る。トップスやボトムスが子どもの成長に合わせて広げられるように織り込まれた服を開発した。素材は防風・防水で、楽しく冒険に満ちた遊びにふさわしい丈夫なものを選んだ。実は、もともと工学を専攻していて、慶應義塾大学への短期留学経験もあるという。「折り紙はその時に知ったんだ。僕が取り組んでいる服の構造が三宅一生さんと似ていると聞いたが、アプローチは異なるよ。もちろん三宅さんのことはとても尊敬している」と話す。

ペルーのレ・クラ(LeQura)は同国のフルーツを用いて、生物を利用した生分解性合成皮革を開発した。手触りや色、硬さや厚さを自在に実現できる技術で、賞金の額は15万ユーロ(約1860万円)。

「レザー生産で奪われる動物の命、なめすために使用する有害な物質や重金属、そして大量に消費される水が問題だった。しかし合成皮革には、本革ならではの特性を満たすものがなかった」と、イセマール・クルーズ・ロエイザ(Isemar Cruz Loayza、28歳)CEOは語る。培養した微生物を利用して作る代替レザーは、どんな革でも再現できるという。また、100%生分解性で、生産工程で出た余り物は、液体肥料としても使うことができ、廃棄物ゼロであるのもポイントだ。「ペルーの花やフルーツから実験をはじめて、現在はパイナップルなどさまざまなフルーツに応用できるようになった。使う材料によって色が変わるので、例えばパイナップルを使えば黄色の合成皮革ができる。また材料を加工することでさまざまな表現が可能になる」と語る。

同アワードは「環境への負荷が少なく地球の天然資源を保護し、ファッションにおける循環を達成すること」を目的としており、4回目の今回は、世界151カ国から6640件の応募があった。昨年は151カ国2600件で、応募数は年々増えている。

また、今年からクラウドファンディングでも資金を募る。同アワードの公式サイトに4日ローンチすると設立者のエリック・バン(Eric Bang)=イノベーションリードは発表した。「これまでの応募者の一番大きな問題点は資金繰りだった。いいアイデアがあっても資金がないと実現できない。今回の5組については独自のキャンペーンを行う。30日間限定で資金を集める」と語った。