“着て捨てる”時代は終わる? 長く着るための次世代クリーニング市場に注目

宅配クリーニングサービス「リネット(Lenet)」が29日から伊勢丹新宿本店と組んで、店頭でダウンなどの対象商品を購入した顧客に対してクリーニングケアチケットを配布するキャンペーンを実施する。配布期間は2018年1月3日まで。単純なポップアップではないキャンペーンとして、伊勢丹としても珍しい取り組みだという。

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「リネット」を運営するホワイトプラスは09年に創業した。ワイシャツ1枚から集荷を依頼できるオンライン上のクリーニングサービスとして利用者を伸ばし、会員登録数は現在25万人にのぼる。「クリーニング市場が縮小する中で、『ダウンやスーツなど、家で洗えないものを仕方なくクリーニングに出す』という意識が広がり、クリーニング自体のブランド価値が下がっていることを懸念していた。われわれは“新品を買った時のような高揚感を持続させる”という本質的なクリーニングの価値を広めたい」と同社。実際に利用者の約9割が有料のプレミアム会員を選択しているといい、「当社のサービスは低価格を打ち出しているわけではないので、付加価値を感じてもらえているのではないか」と話す。

「リネット」はテクノロジーを活用したネット完結型のクリーニングサービスだ。クリーニング専門企業と提携し、ユーザーとクリーニング業者をつなぐ。加えて配送期間を短縮できるよう、大阪や神奈川など全国4カ所にクリーニング企業と共同で専門工場を設立した。これらには「リネット」のユーザーデータを連携するシステムや物流システムを導入し、大幅に利便性を向上させた。

注目すべきは、アパレルやEC企業と積極的な連携をしている点だ。先の伊勢丹新宿本店に限らず、これまでマークスタイラー(MARK STYLER)やベイクルーズ(BAYCREW’S)、エルショップ(ELLE SHOP)、マガシーク(MAGASEEK)などとも、商品購入時にクリーニングの利用クーポンを配るという施策を行ってきた。今年、6月にフリークス ストアの自社ECで行った「カナダグース(CANADA GOOSE)」を含む対象アウターのクーポンキャンペーンでは、当該期間のアウターの売り上げが前年比850%という驚異的な数値を記録した。

アパレル企業で早くからクリーニングサービスに目をつけていたのは、ストライプインターナショナルだろう。同社は15年に宅配クリーニングのBASKETを完全子会社化した。今年1月、宅配クリーニング市場が同社の想定ほど伸びなかったことを理由にサービスを一旦終了したが、自社ブランドの商材とともにクリーニングサービスを提案したのは画期的だった。最近では、マッシュビューティーラボが洗濯代行サービスのアピッシュと提携し、“都市型ソーシャルランドリー”を中目黒駅高架下にオープンしたことが記憶に新しい。アパレルではないが、ファミリーマートも店内にコインランドリーを併設した店舗を500店舗出店すると発表したばかりで、業界を越えてクリーニング事業への注目度の高さがうかがえる。

“着て飽きたら捨てればいい”というファストファッションの流れが収束しつつある一方で、“長く着ることができる良いものを買うべきだ”という風潮が広まっている。そんな中で、アパレル企業としても、販売時にクリーニングを提案することは非常に効果的だろう。実際、「リネット」がニュウマン(NEWoMan)新宿と共同でクリーニングキャンペーンを実施した時には、テナントの店長向けに洗濯に関する講義を実施した。その結果、「店頭でクリーニング利用券のついた洋服を販売しながら、接客時にお手入れについての説明ができた」という声が販売員から相次いだ。

サービスは異なるが、収納サービスのサマリー(Sumally)も10月からナノ・ユニバース(NANO UNIVERSE)やスノーピーク(SNOWPEAK)といったアパレル企業と提携し、店頭で私物保管サービスの提案をしている。「新しい洋服が欲しくても置くところがない」という顧客の悩みに応え、購入を後押しする効果があるという。“長く着ることができる良いもの”を販売する上で、顧客のニーズに応える付加サービスはアパレルとの親和性が非常に高い。アパレルを救う新たなビジネスとして、テクノロジーを活用した“付加価値”サービスには今後も注目したい。